タバコに関するポリシー
公共の場における喫煙という問題について
とんかつカンティーヌの店主は、このことについて、ずっと長いこと考え続けてきました。もう本当に、ずっと前からです。自分が店主として責任を負っている店として、この問題を、どうすべきなのか。
自分の中では「こういう考えと根拠に基づいて、こうすべきだ」という明確な考えはあるものの、
それは世間一般の感覚、特に「思想信条や、特定の価値観に基づいて営業方針を決定すること」が一般的でない日本の飲食業の文化的風土の中において、お客様の目には、どのように映ることになるのか?……
しかし私の中でこれはもはや、「飲食店の中におけるタバコの問題」という枠を飛び越えて、
民主的社会存立の礎としての、「基本的人権とはなにか」にまで敷衍される問題、
これを社会としてどう考えるべきなのか、という問いにまで、関わってくる問題なのです。
私は、「健全な批判精神」という信念をもって、「とんかつカンティーヌ ゆめみるこぶた」が存在することの社会的意味、事業理念の体現のひとつとして、
この方針を公にし、貫くことを決心しました。
当店のタバコに関するポリシーは、
以下の通りとさせていただきます。
■ 喫煙者の方は、当店をご利用される日は喫煙を避け、においや副流煙が衣類に一切ついていないことをご確認の上で、お越しください。
■ 歩きタバコ、路上喫煙をする習慣がある方は、当店のご利用をお断りいたします。
■ 喫煙者の方でなくとも、ご来店の時点で明らかなタバコのにおいが衣類から感じられた場合、ご入店できないことがあります。
■ これらに関するご了承は、ご予約の時点で確認させていただきます。
以下は詳細説明です
(※こちらはご予約の際の必須確認内容ではありません。ご興味ある方だけお読みいただければ幸いです。)
当店では、以下の不等式を一貫したポリシーといたします
タバコを
吸いたい者の
権利
タバコから
逃れたい者の
権利
積極的自由(〜への自由)よりも、
消極的自由(〜からの自由)が
まずは優先して保護されるべき、
という考えです。
積極的自由、消極的自由とは
冷戦以降、アメリカを先鋒として加速度を増し続けてきたものの、コロナ禍の混乱を通して、世界中の「民主主義国」でその脆さや危うさが指摘されることとなり、今また、ウクライナ情勢から世界の政情不安、地政学的不安を通して、「人類普遍の価値」と簡単に語られてしまってきた「それ」が、本当にそう簡単にそのように結論づけられるものであったのか、問い直されなければならない段階に至っている…「自由」という概念。
「個人の自由」の領域は、どこまでも際限なく広がっているものなのか?
それとも自由には、ある範囲において制限されるべきだと言える、妥当な根拠があるのか?
「自由」という言葉自体が、明確な意味が不明瞭な「バズワード」と化してしまい、国によってはそれが「原理主義化」してしまった現代において、政治哲学的に言うところの「積極的自由(〜への自由)」と「消極的自由(〜からの自由)」という考え方の区分は、見落とされることが多くなってきているように感じます。
我々の「自由」の希求には、2種類があります。
「自由に◯◯がしたい」という、「〜への自由」、
もうひとつには「◯◯(権力や束縛や苦痛など)から自由でありたい」という、「〜からの自由」です。
歴史的に人類が最初に手に入れたのは、後者の、「消極的自由」でした。そしてそこから「人権」という概念が鍛え上げられ、「積極的自由」の領域に足を踏み入れ、しだいにそれが拡張してきました。現代の自由民主主義社会に生きる我々には、ほぼあらゆる形での「積極的自由」が保証されることとなりました。
しかし私は、「自由は、どこまで自由であってよいのか?」と問わなければならない場面に遭遇したとき、やはり優先されるべきは、弱い者を守るためにまず絶対的に必要な自由…「◯◯から自由でありたい」という、「消極的自由」であると考えるのです。
タバコを
吸いたい
自由
タバコから
逃れたい
自由
店主はこれまで、自分が外食の「ユーザー(客)」としての立場である場面において、タバコ、タバコの煙、タバコのにおい、衣類にしみついた副流煙、ほかタバコに起因する諸々によって、本当にいやな思いをさせられてきたことが、数え切れないくらいあります。ユーザーとしてではなく飲食業の「作り提供する側」としての経験まで含めると、もっともっとです。
そのときのすべての体験の価値をぶち壊しにされたこともあります。金返せと言いたくなったこともあります。そしてその経験をしたすべての店に対しては、もう二度と行くまいと誓ったものです。
誰かを食事に招くということは、
その人が食事をしている間の
すべての幸せの責任を、
引き受けるということである。
〜ブリヤ・サヴァラン〜
私は店主として、事業主(経営者)として、お客様に、
「タバコの存在感があったせいで、すべてが台無しになった」
などという思いを、決して、させたくありません。
皆様が皆様、私と同じくらいそんなに強く神経質に思われることもないのかもしれませんが、それでも、「もし目の前のお客様が、自分と同じような感覚をお持ちの方であったとしたら…」という想定のもとに、その方を守るための最大限の努めを、店主の責任として、果たそうと考えています。