(つづき)
そもそも、デリ業態をこれ以上続けるわけにはいかない、と結論したその理由の半分は、前述したとおり、
過去に例を見たことがなかったほどの、食材(や消耗品)の急激な値上がりです。
それは、恐るべき勢いで、我々飲食店に襲いかかってきていました。
3月以降、各種の仕入れ先からの「価格改定(値上げ)のお知らせ」は、あらゆる分野に及んで、何かしらの食材が、ほとんど毎週といってよいほどのペースで、次から次へと届くようになりました。
しかもなお、それでも、「ウクライナ情勢によってユニークに(それによって新たに、独立して)発生した値上がり分」は、まだおそらくは含まれていなかったのです。(予想値くらいは、織り込まれていたのかもしれませんでしたが。)
つまり、あらゆるモノの輸送や生産、製造などに必要な原油価格上昇分、小麦の供給量減少分、畜産農産物のための飼料、肥料供給の減少分、そしてそれらのグローバル、マクロな影響、などです。それらは、ヨーロッパよりは遅く、日本にはこれから短・中・長期的に、波及してくるはずです。
前述したように、これはコロナ禍によって生じた世界的な物流の混乱に(未だ解消されていません)さらに乗じるようにして起こった事案です。こんな複雑で重大な要因が絡まり合っている状態では、物価などどこまで上がるか、わからない。
しかもさらにそのころから、円安の懸念が、忍び寄り始めていました。
アメリカの消費欲求爆発は昨年くらいからすでに始まっており、前述したモノの供給不足などにより、需給バランスがさらに乱れて急速に物価が上昇。それを金融引き締めによって抑え込まなければならない段階に来ていたときに、ウクライナ情勢が勃発。アメリカの物価上昇の勢いに、歯止めがかからなくなりました。
景気後退のリスクを負ってまでも、力づくの金融政策で物価の抑え込みにかかるアメリカと、実体経済そのものはまったく成長していない日本。金融緩和政策をゆるめるわけにはいきません。この根深い構造からくる金利政策の差は、円安の流れに、アクセルをふませ続けることにしかならないことは、この時点でも明らかでした。
カロリーベースで食料自給率30%台の日本。それでも我々国民が今まで生きていられたのは(しかもデフレ価格で)、海外からの直接的、間接的な、安価な食糧の輸入があったおかげです。
この円安進行によって、その構造が、これから数ヶ月かけて、おそらく崩れ始める。
今まで良くも悪くも安定を保ってきた、構造そのものが。
この物価上昇は、どこまで拡がるか、わからない。それがいつまで続くか、わからない。
これは、4月〜5月時点の私にとっては、恐るべき感覚でした。
(つづく)
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