まさか、高級路線の「ガストロノミーレストラン」を目指すつもりなのか?
多くの方はもしかしたら、このように想像されたかもしれません。しかし、さすがにそれは「まさか」です。そういうつもりではありません。「空間はカフェ」で、さすがにガストロノミーは目指せません。
ただ、カンティーヌのように毎週ではない、1ヶ月、2ヶ月、数ヶ月に一度くらいの、ちょっと料理を作るのに疲れた日、ちょっとふんぱつをして外食を楽しみたい日…そんなときに「予約をとって」使ってもらえる店にしようと、考えているのです。
コンセプトは、
「空間はカフェ、
使い方は食堂、
体験はレストラン。」
にプラスして、
「そして今日は、ちょっとふんぱつの日。」
今週末は少しおいしい焼肉を食べに行こう!元気出すために、久々にうなぎでも食べにいこう!誕生日には、少ししゃれたイタリアンに行ってみよう!それと同じくらいの感覚の中で、もうひとつの選択肢に、なってみたいのです。
でも、当店の一番の特徴である、「体験はレストラン」。
その非日常の特別感は、焼肉店やうなぎ店とは、また全然別のものになる予定です。これは現時点では、今のところまだ「お楽しみに!」としか言うことができません。
ガストロノミー…最先端、最高級、の美食の世界。それを目指すつもりというわけではない、というのなら、「僕はやっぱり、ガストロノミーの世界の料理人」という投稿(4/29〜)の中で語ったことは、なんだったのか?
これはあくまで、私の心の中だけの問題です。自分の中にあるいろいろな迷いとの葛藤、という問題です。
しかしそのマインドセットの違いは、目に見えないようなレベルでの品質の違いにおいて、必ず影響を及ぼしそうな気がしています。なにせ、これまで私は(カンティーヌ業態時代は)、「1700円の定食」を作る、というマインドセットで、料理を作っていたのです。
それはつまるところ、「1700円に抑えるためには、この素材は使えない」とか、「1700円に抑えるためには、この素材はこのグレードにしておくしかない」とか、「1700円なんだから、これはこれで十分アリだと思ってもらえるだろう」とか、「原価を抑え込む発想」に縛られることにしかなりませんでした。
それは多くの消費者ビジネスが普通にやっていることで、それが間違っているとかいう話ではありません。
実際私は、当初は、「本当に必要であるもの以上の素材や手間を、飾りや見た目のためにつぎ込むことが、本当にお客様にとって付加価値となるのか?そんなものは削ぎ落としても、その分手頃な価格になるのなら、それこそが付加価値ではないのか?」と信じ、その考えならば、1700円でそこそこのものが出せる、と考えていました。
でも、毎日唯々諾々と同じことを同じままに繰り返し続けていくだけならばいざしらず、やはりやっていく中で、ほんのちょっとずつでも良いものにしていきたい。停滞とは、退化にほかならない。そのように、ことさらに考えなくとも、自然となっていかざるをえませんでした。
その結果、いろいろなものが、新しく付け加わっていきました。そしてそれは、着実に、お客様の満足度の向上につながっていっている、という感覚もありました。しかし同時にそれは、「1700円定食」を作るマインドセットの中では両立しえない、致命的なバグであることにも気づき始めていました。
私は、ガストロノミーの料理人です。昨日より今日、今日より明日、少しでも何か進化していくことを、自分で自分に宿命付けている職業です。その矜持と、はっきり向かい合う必要がありました。
前回の投稿でお知らせしたように、もともとの「とんかつカンティーヌ」の実現は、一旦延期となりました。そのコンセプトの発想から始まった当店において、それは不思議なことに、次のステップの目標となりました。
これからやろうとしている、もともとの「とんかつカンティーヌ」に、プラスα(アルファ)のコンセプトを加えた、新しい店の形は…
「とんかつカンティーヌ⁺(プラス) ゆめみるこぶた」
店名ロゴの「カンティーヌ」のあとに、ちょこっと「+」が追加されますが、それはお客様にとっては、意識されなくとも、気づかれなくとも、かまいません。「プラス」と足して読む必要も、ありません。
だからお客様にとっての発音は、「とんかつカンティーヌ ゆめみるこぶた」のままです。
でもこれは、自分にとっては、大きな変化と決断の象徴です。そして「カンティーヌ」は明確なコンセプトを持った一つの業態、「カンティーヌ+」は、さらにそれにプラスαされたコンセプトを持った別の業態、と、立ち位置を明確に分けるための、ブランディング的な意味があります。だからこそ、「次のステップで、『カンティーヌ』をやろう!」なのです。
本当のところを言うと、実はもともと、「カンティーヌ」がうまくいって、事業的に次のステップに進むことができたら、いろいろやってみたいと考えていたことがあって、そのうちの一つに、「一段階、価格帯が高いお店。定食だけでなくて、家族で、子供のためにも、おじいちゃんおばあちゃんのためにも、本当にちゃんとした料理が食べられるような、すっごく上質な洋食ファミリーレストラン、みたいなの」をやってみたいという考えが、あったのです。
それとは形が違うことにはなりましたが、でも順序的にはそう考えていたものが、奇しくも、このタイミングで実現、ということになりそうです。
カンティーヌ時代にさんざん頭を悩まされた「予約制にできない」問題(いろいろと物議をかもしました)と、それと双子の問題であった「3名以上利用(ファミリー利用)が困難」問題は、なんとか克服の手段を描けそうです。実は、地味なのですが、「予約制度」の問題が、一番のネックだったのです。
今は、このようなビジョンを描いています。もう少しで、残されたパズルのピースがぴたっとはまりそうな感触を得ています。そういうわけで、完全な詳細については、また後日、そう遠くないうちに、お知らせができると思います。
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