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「カスハラ問題」について考える② 社会の構造的問題として本当に考えるべきなのは、ニュースになるレベルの「カスハラ」客ではなく、それ未満の「迷惑」客である、という考え方

(続き)


前回の投稿「カスハラ問題を考える①」では、以下の論点を立ち上げました。


1)「カスハラ問題」の頻発とその悪影響のインパクトが、ここ最近で急激に、社会的に認知されるようになってきている


2)しかし「カスハラ」という言葉じたいが、現段階ではあいまいで、明らかに実害を伴う問題としての「カスハラ行為」「カスハラ人物」と、それ未満の「迷惑行為」「迷惑人物」との間にあるグラデーションまでをも含めて語られておらず、問題の全体像や構造の分析がなおざりにされたまま、真に問題解決的な言説が生まれていないように、店主には見えている


3)そしてこれは小売や飲食などの「接客業・サービス業という特定の業界内だけの問題」ではないと、店主は考えている



この「カスハラ問題について考える」シリーズで今回語ろうとしていることは、だいたい全体の文章の構成は完成していて、数回に分けて完結する予定なのですが、


前回の①を投稿したあとに、突然ふっと思い出した過去の文章がありまして、


それもけっこう、今回の論旨に関わっているというか、別の角度から今回の論理を支えている土台になっているというか、とにかく布石というか示唆を含んでいて、


そんな意味で、今回の補足的な文章としてなかなか面白いかもしれないなあ、と思いましたので、


一応、ご紹介しておくことにします。

思い起こせばちょうどほぼきっかり2年前の今、書いた文章です。


ウクライナ侵攻が長期化の様相を見せ始め、様々な要因から物価が急激に上がりはじめ、コロナ禍が明け始めてマスク以外の行動制限が急速に解かれ始め、安倍元首相銃撃事件があり、その直後に参院選があり、と、私の中でけっこう激動が連続した、まさにそのころでした。


「店主ブログ」のブログ記事、2022年7月21日~28日にかけて、7回にわたって連載された『カフェ業態を始めた今、考えていること①~⑦』という文章です。一話につき1500字程度になっています。


これは、コロナ禍で一度耳目を集めたにも関わらず、その後立ち消えになってしまった、「エッセンシャルワーカー」の社会的立場をめぐる問題性と、社会の構造について、店主の見方を論じた文章です。


ついでに言うと、その直前の7月14日付の投稿である『民主主義とは何か?〜参院選を終えたこのタイミングで〜』というのも、それのさらに補足的な文章となっています。


(※ちなみにこの一連のブログ記事、一話を読んだあとに「次の話を読む」というワンタップのリンクボタンが、付いていません。サイトビルダーの仕様の問題です。ですのでいちいち画面を戻って、次の話をタップしなければいけません。面倒くさくてすみません。なぜこんな仕様になっているのか。)



さて前置きの「補足情報」が長くなりましたが(いつものとおり)、とうとう今回②の本題に入っていきますと、


私としては、前回提示した、上の論点2)の問題を、まずはきちんと考えてみたい、ということなのです。つまり、今たくさんニュースになっているような「カスハラの典型事例」のような問題と、それ未満の日常茶飯の「迷惑」全般の、線引き、あるいは線引きではなく、グラデーション、についてです。


端的に言ってしまうと、実は私は、ニュースになっているような「カスハラ」問題(これを、この文章ではカッコつきで「カスハラ」と表記します)は、比較的「考えやすい」問題で、対処策もそれほど難しくない問題、と考えています。


この「カスハラ」、ご存じでない方に、具体的にどんな内容かとご紹介しますと、


事業者側に対して客が怒号や罵声を長時間にわたって浴びせ続けたり、土下座を強要したり、暴力的、威圧的な脅迫をしたり、とか、そういうことです。こういうことが増えてきていて、現場のスタッフが精神的に疲弊したり追い込まれたりして鬱状態に陥るとか、退職するとか(ひどいときには自殺するとか)、事業者側、会社側としても、こういう事態によって業務効率を著しく下げられてしまって、経済損失を被っているとか、そういうレベルの話です。


特に金額的インパクトの大きい例としては、コロナMAXの時期に大きくニュースになったものがありましたが、航空会社で、飛行機の搭乗時には全員にマスク着用を「ルールとして」お願いしていたにも関わらず、それを頑として聞こうとせず、わめき暴れたたった一人の客のせいで、離陸できず、運航予定を狂わされたとか、そういうケースがありました。航空業界では、これに限らず、同様の種類の客が、いつでもけっこう多いみたいです。


そんなわけで、つい先日、複数の航空会社が、業界全体の取組として、足並みをそろえて共同で「カスハラ」行為の定義と、それへの対処ポリシーを発表していましたが、それら全て、普通に犯罪に該当する内容なんじゃないかというリストでした。


これはもはや、ある意味「刑法ギリギリ」なレベルの問題です。相手の権利や尊厳を不当に脅かし、実害を与えているわけですから。取り締まったり、厳然とした対処策を示してこなかったほうが、逆にすでに問題だったんじゃないかと、私なんかは考えてしまいます。


こういう「カスハラ」に対して、明確で毅然とした対処を定めましょう、そのルールの厳格化をみんなどうぞ理解してください、みたいなことが、今経済界、行政で、語られていることなのです。


こういうことが今までまかり通ってきてしまったのも、結局、今まで「誰も言い出さなかったから」というだけで、最近誰かが言い出してくれたおかげで、やっと自分も臆せず言えるようになった、みたいな、発言責任回避というか、追従主義というか、「正しいと思うことを、はっきり自分の発言責任として口にしない」日本の社会風土の在り方そのもののような気がして、個人的にはちょっとイヤな気分も、心の中にはくすぶります。


でもまあ、とにかくそんな経緯で、ここまではハッキリ言うことができる段階にまで来ましたし、その事実そのものは、とても喜ばしいことです。社会もちょっとずつだけ、未来志向的に良い方向に向かってきている気がします。


つまりそんな「ほぼ犯罪的行為」である「カスハラ」行為は、比較的明確に定義しやすいし、そこまでのレベルの行為である以上、「拒否、拒絶」するのも、理解されやすいことだと思います。これが、比較的「考えやすい」「対処しやすい」問題だと、私が考えている理由です。言うなれば、必要なのはただ単に、毅然とした態度、だけです。


私が、分析的にもっと考えてみなければならないと考えている問題、本当に難しい問題、そして、日本社会の思想的構造がそこに深く関わっている問題は、そんな異常人物による異常行動ではなく、「カスハラ」未満の「迷惑行為」なのです。



(続く)



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